対旋律(たいせんりつ)とはメインのメロディに対して、サブのメロディを付ける事で、所謂ハモらせるというやつです。どういったハーモニーにするのか、それを考える事をハーモナイズと言いますが、日本を代表する曲「さくら」を例に挙げ見ていきましょう。
対旋律(主旋律の上)
主旋律はメインのメロディ
メインのメロディの事を日本式には主旋律(しゅせんりつ)と言い、上記4小節が「さくら」の主旋律です。これらの主旋律を1度と考え、先ずは主旋律より上で2度~7度の対旋律を付けてみましょう。以下でも分かり易いように、主旋律の音符の棒は下に向けています。
2度は不協和音程
長2度と短2度があるものの、2度は不協和音程と言われ、主旋律と音がぶつかって、綺麗には聞こえないでしょう。
3度は協和音程
長3度と短3度は協和音程と言われ、まずまず綺麗にハモる音とされています。しかし、どちらが主旋律か分からなくなる、というケースもあります。
増4度は不協和音程
完全4度は完全音程と言われ綺麗にハモりますが、最後の増4度は不協和音程なので、不安定な音程がするかと思います。
減5度は不協和音程
完全5度は完全音程と言われ綺麗にハモりますが、減5度は不協和音程なので、やはり不安定な音程がするでしょう。
6度は協和音程
長6度と短6度は協和音程とされるので、まずまず綺麗にハモりますが、音が高くなっている事もあり、主旋律が聞き取り辛いかもしれません。
7度は不協和音程
長7度と短7度は不協和音程と言われるので、音が反発し合っているのが聞き取れるでしょう。
主旋律の邪魔になる?
濁り合う音程もあれば、綺麗に解け合う音程もありましたが、主旋律の上に対旋律をつけると、主旋律の邪魔をしている、と感じられた人もいるでしょう。そこで次は主旋律の下に対旋律を付けてみますが、その前に転回音程(てんかいおんてい)というものを考えてみましょう。
転回音程
転回音程はオクターブ上下
短2度のシ~ドのドをオクターブ下げてやると、長7度のド~シになります。これが転回音程というもので、どちらか一方をオクターブ上下させてやります。なので、シをオクターブ上げても転回音程です。
転回音程は短音程⇔長音程
短3度のラ~ドのドをオクターブ下げると、長6度のド~ラになります。短音程の転回音程は長音程になり、逆に、長音程の転回音程は短音程になる、という特徴があります。
転回音程は完全音程⇔完全音程
完全4度のミ~ラのミをオクターブ上げると、完全5度のラ~ミになります。完全音程の転回音程は完全音程にしかならない、というのも特徴です。
転回音程は減音程⇔増音程
減5度のシ~ファのファをオクターブ下げると、増4度のファ~シになります。減音程の転回音程は増音程になり、逆に、増音程の転回音程は減音程になる、という特徴があります。
転回音程は響き方が似る
長6度のファ~レのファをオクターブ上げると、短3度のレ~ファになります。転回音程になった後でも、転回音程になる前の響き方に似ている、というのも特徴です。
転回音程は足すと9度
長7度のファ~ミのミをオクターブ下げると、短2度のミ~ファになります。転回音程の前後の度数を足すと、必ず9度になるというのも特徴です。
転回音程のまとめ
- オクターブ上下させて作る音程。
- 短音程は長音程になり、長音程は短音程になる。
- 完全音程は完全音程にしかならない。
- 減音程は増音程になり、増音程は減音程になる。
- 転回音程は響き方が似ている。
- 転回音程の度数を足すと9度になる。
対旋律(主旋律の下)
主旋律の下の対旋律
上記4小節は最初と同じ「さくら」ですが、主旋律の上で鳴っていた対旋律を、転回音程を利用して、主旋律の下で鳴らしてみます。以下でも分かり易いように、主旋律の音符の棒は上を向いています。
7度は不協和音程
主旋律の2度上で鳴っていた対旋律を転回音程にしたので、7度の関係になっています。長7度と短7度は不協和音程なので、全体的に薄気味悪い印象を持つかと思います。
6度は協和音程
主旋律の3度上で鳴っていた対旋律を転回音程にしたので、6度の関係になっています。長6度と短6度は協和音程なので、そこそこ綺麗にハモっているかと思います。
減5度は不協和音程
主旋律の4度上で鳴っていた対旋律を転回音程にしたので、5度の関係になっています。完全5度は完全音程なので、綺麗にハモりますが、最後の減5度は不協和音程なので、不安定な音程です。
増4度は不協和音程
主旋律の5度上で鳴っていた対旋律を転回音程にしたので、4度の関係になっています。完全4度は完全音程なので、綺麗にハモりますが、増4度は不協和音程なので、不安定な音程に聞こえるでしょう。
3度は協和音程
主旋律の6度上で鳴っていた対旋律を転回音程にしたので、3度の関係になっています。長3度と短3度は協和音程なので、なかなか綺麗にハモって聞こえるかと思います。
2度は不協和音程
主旋律の7度上で鳴っていた対旋律を転回音程にしたので、2度の関係になっています。長2度と短2度は不協和音程なので、全てが反発し合って聞こえるかと思います。
対旋律まとめ
協和音程が使い易い
もっと細かく分ける事もありますが、シンプルには完全音程・協和音程・不協和音程の、三種類に分ける事が出来ます。中でも使い易いのが協和音程の3度と6度で、これを主旋律の下で鳴らしておけば、大抵は綺麗にハモってくれるでしょう。
完全音程は使い辛い?
完全音程は綺麗にハモりはするものの、色や癖が強く出過ぎるため、目立つポイントでは使われない傾向にあります。
強拍で鳴る3度下の対旋律
対旋律は全ての主旋律に付けてしまうと、しつくこ感じられてしまいます。なので、1・3拍目の強拍などの要所で使用してやると、安定し落ち着いたものになると思います。
強拍で鳴る6度下の対旋律
次は対旋律が主旋律の6度下で、ここでも1・3拍目の強拍で鳴らしています。先程の3度下の対旋律と、好みが分かれるところでしょう。
3度下と6度下を使う
もちろん対旋律は一種類しか使ったらいけない、という事はありません。3度と6度を織り交ぜて使ってやっても、また雰囲気の違う曲にもなります。
3度と6度は安定するが・・・
3度と6度を使っておけば無難ですが、そればかりでは面白味に欠ける、という事も感じられてきます。なので、慣れてきたら不協和音程なども取り入れ、次のように大胆にアレンジしてみるのも良いでしょう。
主旋律の合間の対旋律
対旋律は主旋律と同時に鳴らすばかりではなく、主旋律の合間を縫うようにして付ける事もあり、これでもガラリと曲の雰囲気が変わるはずです。4小節目の3拍目は、短2度の不協和音程が目立ちますが、これくらいであれば、大きな違和感は感じられないかと思います。
コードが絡むと難しく
曲にはコードが絡んでくるのが普通です。そうすると、邪魔に感じられる対旋律が出てきたりするので、削ったりする音を考える必要もあります。
- 対旋律は主旋律とハモらせたりする音。
- 転回音程はオクターブを上下させて作る音程。
- 対旋律は3度下と6度下を基本に考えると良い。