曲の速さを決めるのが速度記号です。速度記号の一部はポピュラー音楽でもよく見られますが、クラシック音楽だけでしか目にしないものもあります。速度記号もイタリア語で表現されており、たくさんの種類がありますが、ここでは基本的なものだけを見ていきましょう。
速度記号①
メトロノーム記号
①②③のそれぞれに「4分音符=数値」が記されており、これをメトロノーム記号と言います。数値が大きいほど曲の速度であるテンポも速い、という分かり易い仕組みです。
1分間に打つ回数
メトロノーム記号の音符は4分音符だけとは限らず、8分音符や2分音符の時もあります。そして、メトロノーム記号は「その音符が1分間に打つ回数」を示しています。なので、上記の3種類は同じ意味合いとなりますが、これは理解できなくても全く問題ありません。
BPM(Beat Per Minute)
④⑤⑥のそれぞれに「BPM:数値」とありますが、ビート・パー・ミニットの略記号で、これも曲のテンポを表しています。メトロノーム記号と同じく、数値が高いほど曲のテンポも速くなります。
メトロノーム記号とBPM
ポピュラー音楽だけを楽しむなら、メトロノーム記号とBPMさえ知っておけば、困る事はないでしょう。
速度記号②
テンポは違ってくる
文字による速度記号もあり、それはイタリア語で書かれます。あくまで目安なので、例えば同じAndanteの曲でも、テンポや雰囲気は微妙に違ってきたりもします。
GraveとLento
Largoよりも更に遅いGrave(グラーヴェ)や、Adagioよりやや遅いLento(レント)等もありますが、ここでは省いています。
BPMも目安
テンポの中間に位置するModeratoをBPM:120としてみると、他の速度記号は上記のような感じになるでしょうか。もちろん、これも大体の目安なので、参考程度にしておいてください。
意味を強めたり弱めたり
接尾辞(せつびじ)というのは単語に付加されるもので、issimoは意味を強め、ettoとinoは意味を弱めます。これらを先程の文字の速度記号に付加させると、微妙なテンポを表現できるわけです。主にissimoを例に挙げて、少しイタリア語の勉強をしてみましょう。
元のテンポで意味が変わる
Largoにissimoを付けるとLargissimoになり、元のLargoより遅くなります。Prestにissimoを付けるとPrestissimoになり、元のPrestより速くなります。このように同じissimoでも、元のテンポが遅いか速いかで意味が変わるので、最初は少し戸惑うかもしれません。
イタリア人には通じない?
LargissimoからPrestissimoまでを、左から遅い順に並べてみましたが、ポピュラー音楽では先ず見ない標語だと思います。また、読み方は英語読みを更にカタカナ読みにしているので、イタリアの方が聞いたら、滑稽な発音に聞こえるかと思います。
速度記号③
だんだんと○○する
曲中にテンポが変わる事もあり、その場合は次のような速度記号が用いられます。rit.(リタルダンド)と、rall.(ラレンタンド)がだんだんと遅くなり、accel.(アッチェレランド)と、string.(ストリンジェンド)がだんだんと速くなります。
今までより○○する
mossoには「今までより」という意味があり、それの頭にpiuを付けると今までより速く、menoを付けると今までより遅く、という意味になります。突然として遅くするという意味の、ritenutoもありますが、どれも使い所が難しく感じられるでしょうか。
フェルマータは停止と終止
tempo rubatoは自由な速さという意味ですが、適度で良い具合の速さという場合もあります。同じような記号にa tempoとTempo Iがありますが、厳密には違う意味のようです。fermataはテンポを一時的に停めますが、使い方によっては終止にもなり、普通はフェルマータ記号が使われます。
- メトロノーム記号とBPMが理解できれば良い。
- 文字の速度記号は絶対的なテンポを示す標語ではない。
- ポピュラー音楽の譜面では一生見ない速度記号もある。