19世紀の中頃、アフリカ系アメリカ人により生まれた、哀愁ある音楽がブルースです。ブルースはジャムセッションでもよく使われ、その場合は大抵、お決まりのコード進行があるので、先ずはその基本を覚えておきましょう。それを理解できたら、少し発展させたブルースのコード進行も考えます。
ブルースのコード進行(三和音)
ブルースはスリーコード
上表は三和音のディグリーネームで、ブルースでは矢印でも示す、TSDの主要三和音を使います。これら主要三和音を英語式にはスリーコードと言い「スリーコードで合わせてみよう」などと言われたら、ブルースの事だと考えて良いでしょう。次からはCメジャーキーで考えてみます。
スリーコードは変わる
三和音のCメジャーキーだと、コード「C・F・G」がスリーコードです。もちろん、Cメジャーキー以外になると、スリーコードも変わってきます。そして、これらスリーコードの使い方ですが、以下のように決まった小節数に当て嵌めていきます。
コーラスはまとまり
上記は簡略した小節で、それが12小節あります。ブルースのコード進行では、12小節を一つのまとまりとして考え、それを何周もして曲が進行します。この一つのまとまりの事をコーラスと言い、12小節ならワンコーラス、24小節ならツーコーラス、36小節ならスリーコーラス、という言い方をします。
最もシンプルなコード進行
Cメジャーキーのスリーコードを置いてみました。これがブルースのコード進行で、最もシンプルな型だと言えるでしょう。音源も聞いてみてください。聞きやすく耳にも馴染み易い、と感じる人も多いかと思います。
少しアレンジしたコード進行
先程の最もシンプルなコード進行から少しアレンジした、上記のコード進行もよく使われます。1~4小節目はTが続いていたので、2小節目にSが置いてあります。12小節目は1小節目のTに繋がる、Dが置いてあります。
ブルースは四和音が本格的
ブルースは三和音でも楽しめますが、ブルースの本来は四和音が通常です。そうしてやる事でブルースっぽさが増しますが、少しだけ手を加えてやる必要があるので、次から考えていきましょう。
ブルースのコード進行(四和音)
ブルースはドミナントセブンス
❶は通常のディグリーネームで、やはりスリーコードを使いますが、このままではブルースは出来ません。Ⅰ△7とⅣ△7をそれぞれ、Ⅰ7とⅣ7のドミナントセブンスにした、❷のディグリーネームが使われます。
3つともドミナントセブンス
Cメジャーキーでも考えてみましょう。❸が通常のコード群、❹がブルース仕様のコード群で、TのC△7はC7に、SのF△7はF7になっています。このようにスリーコードは3つとも、ドミナントセブンスにして弾くのがブルースです。
不安定だが格好よい
同カテゴリでもドミナントセブンスコードは、不安定で落ち着かない響き、というのを説明してきました。ブルースではそれが連続していますが、それほど気にならず、格好よさの方が目立つでしょうか。
ブルース独特のコード進行
❺❻ともに9~10小節目に注目してください。本来ならDのG7は、TのC7へ進行させてやるのが普通です。それがSのF7へ進行しているのが、ブルース独特の個性が強いコード進行です。
ブルースのまとめ
- ブルースはスリーコード
- ブルースは12小節でワンコーラス
- ブルースは二通りのコード進行が基本
- ブルースはドミナントセブンスコード
- ブルースはDからSのコード進行
ブルースはジャズでも馴染み
上記の5つをブルースのコード進行の基本、と考えておきましょう。また、ブルースはジャズでも頻繁に演奏されますが、その場合はコード進行がアレンジされます。次からはそれらを考えていきます。
ブルースのコード進行(ジャズ)
ツーファイブはコード進行
英語式ならディグリーネームは「ワン・ツー・スリー」という、略式呼称が当てはめられます。ワンをゴールと考えた時、その過程として、ツーをスタートとし、ファイブを折り返しにしてやると、気持ちの良いコード進行を作れます。このコード進行は大抵ワンを省略し、ツーファイブと言われます。
ファイブからワンは・・・
ファイブからワンのコード進行は、ドミナントモーションです。また、以下では裏コードやセカンダリードミナントが登場しますが、それらの詳細は借用和音で説明しています。
Cメジャーキーのツーファイブ
Cメジャーキーで考えると、ツーが(S)のDm7で、ファイブがDのG7で、ワンがTのC7です。ここではワンのTが、ブルース仕様のC7になっていますが、これはC△7やC6となってもツーファイブです。このツーファイブを、ブルースのコード進行に置いてみます。
ツーファイブを置く
⓪は4小節目もC7が続きますが、それをワンとして、3小節目にツーのDm7と、ファイブのG7を置いたのが❶です。これでコード進行にも、アレンジが加わりました。
ツーファイブをアレンジする
❶の6小節目はF7が続きますが、ここに7小節目のC7をワンとするツーファイブを置くと、先程と同じくDm7とG7ですが、G7を裏コードにしてやっても良く、その場合は❷のようにD♭7になります。
T以外にもツーファイブを作る
前の2つはTのC7をワンとするツーファイブでしたが、SのF7やDのG7に対しても、ツーファイブを作ってやっても良いです。DのG7にツーファイブを作るなら、以下のように考えます。
G7を仮のTと考える
Cメジャーキーに於けるG7はDですが、これを仮のTと考えます。Gメジャーキーだと、ツーがAm7、ファイブがD7、そしてワンがG7です。先程のコード進行に、このツーファイブを置いてみましょう。
G7に繋げるツーファイブ
❷の8小節目はC7が続きます。ここに9小節目のG7を、仮のワンとするツーファイブを置くと、❸で見られるように、Am7とD7が入ります。また、D7を裏コードのA♭7にしても良いでしょう。
セカンダリードミナントも置く
❸の12小節目のG7は、1小節目に繋がるドミナントモーションで、これをツーファイブにしたのが❹です。更に12小節目のDm7に対して、11小節目にA7のセカンダリードミナントを置いたのが❺です。
ジャズブルースのコード進行
コード進行にアレンジなしの⓪から、アレンジありの❺を改めて見比べてみましょう。このような感じでジャズブルースは、コード進行にアレンジを加える事が多いです。ほぼ原型のコード進行もあれば、原型のコード進行が分からないくらい、大胆にアレンジされるている場合もあります。
ジャズは自由度が大きい
例えば⓪のコード進行を基に、アドリブ演奏者の伴奏や、逆にアドリブ演奏をするとしましょう。この時に❺のコード進行で弾いても、大きく変にはなりません。これはジャズに限った事ではありませんが、特にジャズはコード進行の即興的なアレンジに、自由が利く音楽と言えるでしょう。
ブルースのコード進行(マイナー)
マイナーキーのブルース
ブルースにはマイナーキーのものもあり、当然メジャーキーとは違ってきます。①はナチュラルマイナーキーのディグリーネーム、②はCナチュラルマイナーキーのコード群です。矢印のスリーコードを使いますが、ファイブのGm7だけこのままでは使えず、次のようにします。
ドミナントセブンスは1つ
ファイブのGm7をG7にすれば、マイナーキーのブルースで使えるコードになり、スリーコードではDだけがドミナントセブンスです。また、そうする事により、マイナーキーでもツーファイブが作れるようにもなります。同じくCナチュラルマイナーキーで、コード進行を見ていきましょう。
スリーコード以外も入る
確信はありませんが、ここでは❸をマイナーキーで最もシンプルな、ブルースのコード進行としてください。9小節目がそうですが、マイナーキーでは基本とされる型からスリーコード以外も入り、その事により9・10・11小節でツーファイブを作っています。
マイナーキーも二通りが基本?
❹のコード進行もよく見られ、マイナーキーの基本に考えておくと良いでしょう。4小節目のC7は5小節目のFm7へのセカンダリードミナント、9小節目のA♭7は10小節目のG7への裏コード、12小節目のG7は1小節目のCm7へのドミナントモーション、といった感じです。
マイナーキーもジャズで演奏される
メジャーキーより頻度は低いですが、マイナーキーのブルースもジャズで演奏されます。その場合は先程も説明したように、上記のコード進行からアレンジした場合が多いでしょう。
- ブルースのコード進行はメジャーキーとマイナーキーに分けられる。
- ブルースのコード進行はアレンジされる事も多々ある。
- ブルースはジャズでもよく演奏される。