和音記号には転回形というものがありましたが、それをコードネームで表したものを分数コードと言います。根音のルートに注目して、見ていきましょう。また、コードにはパワーコードという、覚えておくと便利なものがあるので、それの作り方も確認しておきましょう。

分数コード

基本形~第三転回形(ハ長調)
基本形~第三転回形(ハ長調)の4小節

転回形は最低音が変わる

ハ長調の7を基本形として、71が第一転回形、72が第二転回形、73が第三転回形で、転回形になると最低音が変わるわけです。詳しくは同カテゴリの、和音の転回形で説明しています。これをコードネームで表すと、次のようになります。

分数コード
分数コードの4小節

分母の音でコードを支える

左のコード以外は分数のような見た目なので、これらを分数コードと言います。意味も見た目のように、分母の音で分子のコードを支える、といった感じです。ここでは省いていますが、分子のコードに分母の音が入っても構いません。

オンコード
オンコードの4小節

オンコードも分数コードと同じ

分数コードはオンコードとも言われ、その場合は上記のようなコードで表されます。しかし、意味は分数コードと同じで、onに続く後の音でコードを支えてやります。ここまでは和音の転回形を、分数コードやオンコードで表してきましたが、次のような事も簡単に出来ます。

分数コードとオンコード
分数コードとオンコードの3小節

コードの構成音以外の音でもOK

CM7の構成音は「CEGB」で、これまではそれら構成音が、分母の音になっていました。しかし、一通りのパターンはあるものの、分母にする音は作曲者の自由です。コードの構成音以外の音を選ぶ事によって、また違った響きが感じられるでしょう。

アッパーストラクチャー
アッパーストラクチャーの3小節

アッパーストラクチャーとは?

今度は分母が四和音、分子が三和音の分数コードで、これをアッパーストラクチャーと言います。三和音を四和音で支えるという感じですが、分子の三和音は分母のコードのテンション、という構成になるのがアッパーストラクチャーです。なのでこれにも、分母と分子で一通りの組み合わせがあります。

全て弾かなくても良い

コードネーム後編(テンションコード)でも説明していますが、アッパーストラクチャーの分数コードは、全ての音を弾かなくても良いです。極端なところでは、分母はルート音だけを弾き、後は分子の三和音といった感じでも良いでしょう。

特殊な分数コードもある

稀に分母と分子の両方が、四和音やテンションコード等の分数コードも見られます。それらはアッパーストラクチャーに分類はされませんが、同じように適当な音だけを選び弾く、という事が多いでしょう。

パワーコード

三和音のコード
三和音のコード3小節

パワーコードを作る

パワーコードは恐らく、ギタリストが使い出したものかと思われます。パワーコードを悪く考えると、付け焼き刃のような感じですが、音楽ジャンルによっては重宝されます。上記はメジャーコードマイナーコードサスフォーコードの三和音ですが、先ずはこれらからパワーコードを作ってみます。

パワーコード①
パワーコード1の3小節

パワーコードは根音と完全5度

先程の三種類のコードからそれぞれ、3度と4度の音を抜いてやりました。つまりパワーコードは、ルートの根音と完全5度で作られるコードです。上記はルートRと完全5度P5を、一音ずつ使っているだけですが、次のようにしてもパワーコードです。

パワーコード②
パワーコード2の3小節

音を重ねてパワーコード

ルートと完全5度だけなら、どういう順番で重ねてもパワーコードです。こうしてやると音量も増すので、曲によってはこの方が良い場合もあるでしょう。次にどういった場合に、パワーコードを使用すると、便利かを見ていきましょう。

同じルートを持つコード
同じルートを持つコードの簡略4小節

即興で伴奏する時

上記のような同じルートを持つコードが連続する時、完全5度も同じ音名になるので、これら4小節は同じ音名のパワーコードで、弾き切る事が可能です。コードの性格は出ず面白くありませんが、即興で伴奏する時などは、先ずパワーコードで凌ぐのも方法です。

CM7のみのコード進行
CM7の簡略4小節

アドリブ奏者の伴奏をする時

コードがCM7のみで、アドリブ奏者の伴奏をするとします。この時アドリブ奏者はCM7にも関わらず、Cm7を中心とした音階で、アドリブを弾く事もあるのです。音楽理論的には矛盾していますが、主にジャズやブルースではよくある事です。両方の構成音を挙げてみましょう。

  • CM7(CEGB)
  • Cm7(CEGB

3度と7度の音がぶつかる

構成音を見るとCM7のEBと、Cm7のEBが合っていません。これらは音がぶつかってしまうので、不協和音が起こりやすくなります。そこで伴奏のCM7をパワーコードにしてやると、音のぶつかりを避ける事が出来ます。最後にパワーコードの指示表記を見ておきましょう。

  • パワーコードの指示なし
    パワーコードの指示なし小節
  • パワーコードの指示あり
    パワーコードの指示あり小節

omitは除外する

❶をパワーコードで演奏してもらいたい、という場合があったとします。そのような時は❷でも見られる、omitオウミト等が使われます。omitは除外の意味があり、omit3なら3度を除外し、omit3.7なら3度と7度を除外するという事です。しかし、omitが使われるのは、極めて稀な事でしょう。

記事終了
このページのまとめ
  • 分数コードは分母の音で分子のコードを支える。
  • アッパーストラクチャー等の特殊な分数コードもある。
  • パワーコードはルートの根音と完全5度で作られる。