その調にない音、つまりは#の嬰音やの変音、ナチュラルの幹音にして、作られる楽曲もあります。そして、それらを階名に直す場合は、適した歌い方があります。また、前のページからは長調の移動ドについて説明してきましたが、短調の移動ドについても触れておきましょう。

#や♭の階名

  • フラットの音名
    フラットの音名の小節とピアノ図
  • ナチュラルの音名
    ナチュラルの音名の小節とピアノ図
  • シャープの音名
    シャープの音名の小節とピアノ図

唱法する時は省略する

唱法(しょうほう)とは音符をドレミで歌う事ですが、ドレミにや#が付いても、それらは省略して、音源のようにドレミと歌います。しかし当然、音高はと#が付くものとして歌います。こういった唱法もあれば、や#が付く音は次のように、全く別の文字を当てて歌う事もあります。

  • フラットのドレミ式固定音名唱
    フラットのドレミ式固定音名唱の小節とピアノ図
  • ナチュラルの音名
    ナチュラルの音名の小節とピアノ図
  • シャープのドレミ式固定音名唱
    シャープのドレミ式固定音名唱の小節とピアノ図

ドレミ式固定音名唱は被る

ドレミにが付くと「ダフォダ」と、#が付くと「デフィデ」と、歌わせるのがドレミ式固定音名唱です。しかし、これは以下で見られるように、変音幹音嬰音で被っている音があります。

  • 被っている音❶
    被っている音1のピアノ図
  • 被っている音❷
    被っている音2のピアノ図
  • 被っている音❸
    被っている音3のピアノ図

被っている音は分かり辛い

❶の「ルチ」と「デフィヤ」が被り、❷の「フォダ」と「ミシ」が被り、❸の「テマ」と「ドファ」が被っています。これでは分かり辛いと、次のようにシンプルにされました。

西塚式ドレミ固定音名唱
西塚式ドレミ固定音名唱のピアノ図

西塚式は分かり易い

一つの音には上記の一文字のみを当て、分かり易くしたのが西塚智光さんで、これを俗に西塚式と言います。この西塚式を移動ドの階名で使う事も多く、ピアノに充てると次のような感じです。

  • ハ長調(Cメジャー)
    ハ長調(Cメジャー)のピアノ図
  • 嬰ハ長調(C#メジャー)/ 変二長調(Dメジャー)の階名
    嬰ハ長調(C♯メジャー)/ 変二長調(D♭メジャー)の階名ピアノ図
  • 二長調(Dメジャー)の階名
    二長調(Dメジャー)の階名ピアノ図
  • 嬰ニ長調(D#メジャー)/ 変ホ長調(Eメジャー)の階名
    嬰ニ長調(D♯メジャー)/ 変ホ長調(E♭メジャー)の階名ピアノ図
  • ホ長調(Eメジャー)の階名
    ホ長調(Fメジャー)の階名ピアノ図
  • ヘ長調(Fメジャー)の階名
    へ長調(Fメジャー)の階名ピアノ図
  • 嬰ヘ長調(F#メジャー)/ 変ト長調(Gメジャー)の階名
    嬰へ長調(F♯メジャー)/ 変ト長調(G♭メジャー)の階名ピアノ図
  • ト長調(Gメジャー)の階名
    ト長調(Gメジャー)の階名ピアノ図
  • 嬰ト長調(G#メジャー)/ 変イ長調(Aメジャー)の階名
    嬰ト長調(G♯メジャー)/ 変イ長調(A♭メジャー)の階名ピアノ図
  • イ長調(Aメジャー)の階名
    イ長調(Aメジャー)の階名ピアノ図
  • 嬰イ長調(A#メジャー)/ 変ロ長調(Bメジャー)の階名
    嬰イ長調(A♯メジャー)/ 変ロ長調(B♭メジャー)の階名ピアノ図
  • ロ長調(Bメジャー)の階名
    ロ長調(Bメジャー)の階名ピアノ図

西塚式を推奨する

私の音楽学校時代に西塚式を、授業で正式に習ったわけではなく、楽典にも先ず出てこないと思います。しかし、階名関連のサイトを見てみると、この西塚式を推奨する人が多く、私も西塚式で訓練をしてきて、良かったと思います。簡単な例を挙げてみます。

ト長調の固定ドと移動ド
ト長調の固定ドと移動ドの小節

ト長調には含まれない音

上記2小節はト長調のメロディですが、矢印で示す「ド##ファ」がト長調には含まれない音です。これらを西塚式の階名にしてやると、それぞれ「フィリ」と歌うわけです。

西塚式を訓練する前に

西塚式の階名をサラリと説明してきましたが、これも習得するには大変な訓練を要します。また、移動ドに関して全く初めての人は、#やが付かない移動ドから訓練していきましょう。それについては前のページの、固定ド唱法と移動ド唱法で説明しています。

短調の移動ド

長調と短調の階名
長調と短調の階名表

短調は移動ラ唱法?

長調の階名はハ長調でしたが、短調の階名は「ラレ・ミファラ」のイ短調を用います。長調を移動ド唱法と言ったので、短調は移動ラ唱法と言いそうですが、短調も移動ド唱法と言われます。ロ短調とト短調を例に挙げ、移動ド唱法で見てみましょう。

ハ短調を階名にする場合もある

日本では短調の階名はイ短調が主流ですが、海外の特にはバークリー音楽大学という、主にジャズを勉強する学校では、ハ短調の「ドファド」を、短調の階名としています。

  • ロ短調(Bマイナースケール)の移動ド
    ロ短調(Bマイナースケール)の移動ドの小節
  • ト短調(Gマイナースケール)の移動ド
    ト短調(Gマイナースケール)の移動ドの小節

階名は同じだが音高は違う

①がロ短調、②がト短調で、それらを音源では、移動ドの階名で歌っています。階名は同じ「ラレ・ミファラ」ですが、音高は違っているのも、耳で確認しておきましょう。次に曲の一部を使い、固定ドから移動ドに直してみます。

  • 嬰ヘ短調(F#マイナー)の荒城の月 固定ド唱法
    嬰ヘ短調(F♯マイナー)の荒城の月 固定ド唱法4小節
  • 嬰ヘ短調(F#マイナー)の荒城の月 主音だけ移動ド唱法
    嬰ヘ短調(F♯マイナー)の荒城の月 主音だけ移動ド唱法4小節
  • 嬰ヘ短調(F#マイナー)の荒城の月 移動ド唱法
    嬰ヘ短調(F♯マイナー)の荒城の月 移動ド唱法4小節

主音から階名を探る

③は嬰ヘ短調の荒城の月、冒頭の4小節です。嬰へ短調の主音はファ#なので、これが④でも表すように、階名の主音であるラになります。これを元に他の音名も、階名に直したのが⑤です。稀に、下記のような階名対応表というのもあるので、これを利用するのも手でしょう。

  • 自然的短音階(ト短調)
    自然的短音階(ト短調)の小節
  • 和声的短音階(ト短調)
    和声的短音階(ト短調)の小節
  • 旋律的短音階(ト短調)
    旋律的短音階(ト短調)の小節

短音階の種類で西塚式

これまでの短音階は⑥にも見られる、自然的短音階を移動ドで考えてきました。ご存じのように短音階は他に、和声的短音階と旋律的短音階があるので、そうした場合は前述した、西塚式で階名を表す事になります。三種類の短音階が混合して出てくる曲もあり、これを階名に直すのは苦労するでしょう。

移動ドの習得は非常に大変

前のページに続き、移動ドについて説明しました。移動ドが扱えると重宝しますが、毎日の訓練でも結果は数年後、と言った所でしょうか。また、私の音楽学校時代から記していた、練習方法などのノートもあり、本当ならそれらも書きたいのですが、膨大な量になってしまうので、割愛させて頂きます。

記事終了
このページのまとめ
  • 移動ドの階名でも西塚式が多く使用される。
  • 短調の階名は「ラレ・ミファラ」。
  • 移動ドの習得も毎日コツコツが必須。