これまでに見てきた長音階や短音階、教会旋法の他にも、音階には沢山の種類が見られます。ソロで活躍するものや、音符の書き方に特徴があるもの、古くから日本で使われてきたものなど様々です。全ての音階を覚える必要はありませんが、こういった音階がある、というのを知っておくと良いでしょう。

五音音階(ペンタトニックスケール)

  • ハ長調(Cメジャースケール)
    ハ長調(Cメジャースケール)の小節とピアノ図
  • ドが主音の長調の五音音階(Cメジャーペンタトニックスケール)
    ドが主音の長調の五音音階(Cメジャーペンタトニックスケール)の小節とピアノ図

長調の五音音階

長音階の第4音目と第7音目を抜くと、それは長調の五音音階になります。①のハ長調を例に挙げると、第4音目のファと第7音目のシを抜いたものが、②のドを主音とする長調の五音音階です。長調の五音音階は英語式でメジャーペンタトニックスケールと言います。

ヨナ抜き

長調の五音音階は第4・7音目を抜くのでヨナ抜きとも言われます。

  • イ短調(Aマイナースケール)
    イ短調(Aマイナースケール)の小節とピアノ図
  • ラが主音の短調の五音音階(Aマイナーペンタトニックスケール)
    ラが主音の短調の五音音階(Aマイナーペンタトニックスケール)の小節とピアノ図

短調の五音音階

短音階の第2音目と第6音目を抜くと、それは短調の五音音階になります。③のイ短調を例に挙げると、第2音目のシと第6音名のファを抜いたものが、④のラを主音とする短調の五音音階です。短調の五音音階は英語式でマイナーペンタトニックスケールと言われます。

ニロク抜き

短調の五音音階は第2・6音目を抜くのでニロク抜きとも言われます。

ドを主音とする長調の五音音階 / ラを主音とする短調の五音音階
ドを主音とする長調の五音音階 / ラを主音とする短調の五音音階の小節とピアノ図

五音音階も平行調

ハ長調とイ短調は同じ音名で作られる、平行調の関係にあります。それら両方から作られる、ドを主音とする長調の五音音階と、ラを主音とする短調の五音音階も、同じファとシを抜いているので、五音音階も平行調の関係に当たります。もちろん、他の五音音階も平行調のペアが作れます。

ブルーノートスケール

  • Cメジャースケール(ハ長調)
    Cメジャースケール(ハ長調)の小節とピアノ図
  • Cブルーノートスケール
    Cブルーノートスケールの小節とピアノ図

ブルーノートスケール(1)

メジャースケールの第3・5・7音目を半音下げると、それはブルーノートスケールになります。①のCメジャースケールを例に挙げると、それのミ・ソ・シを半音下げたものが、②のCブルーノートスケールです。また、半音下げた音自体をブルーノートと言います。

  • Cマイナーペンタトニックスケール(ドが主音の短調の五音音階)
    Cマイナーペンタトニックスケール(ドが主音の短調の五音音階)の小節とピアノ図
  • Cブルーノートスケール
    Cブルーノートスケールの小節とピアノ図

ブルーノートスケール(2)

ブルーノートスケールは他にもあり、マイナーペンタトニックスケールから作るものです。①はCマイナーペンタトニックスケールですが、そこにソを足してやってもCブルーノートスケールです。先程のブルーノートスケールとは音の数が違いますが、ブルーノートは共通しています。

半音階(クロマチックスケール)

ピアノ図
ピアノ図画像

半音階は隙間なく

ドから順番に白鍵を弾いていけばハ長調ですが、間にある黒鍵も弾いてやると、ドが主音の半音階というものになります。半音階は音程にも特徴がありますが、音符の書き方である記譜(きふ)にも特徴があります。同じくドを主音とした、半音階の記譜を見ていきましょう。

和声的半音階の記譜
和声的半音階の記譜の小節

和声的半音階は臨時記号が多い

ハ長調の第4音目に当たるファだけを半音上げ、他を半音下げるというのが和声的半音階の記譜です。これは見ても分かるように、臨時記号を多く使うのが特徴です。

旋律的半音階の記譜
旋律的半音階の記譜の小節

旋律的半音階は分かり易い

ハ長調の第7音面い当たるシだけを半音下げ、他を半音上げるというのが旋律的半音階の記譜です。この記譜は臨時記号が少なく、読譜もし易いかと思われます。

半音階の下行形の記譜
半音階の下行形の記譜の小節

下行形の記譜は同じ

音階が上がっていく事を上行形、逆に下がって行くことを下行形と言ったりします。半音階の下行形の記譜ですが、上記のように統一されているようです。

全音音階(ホールトーンスケール)

ドが主音の全音音階(上行形)
ドが主音の全音音階(上行形)の小節

全音音階は全て全音

一音ずつの音程が全て、全音で作られるものを全音音階と言います。先程の半音階に合わせると、全音階と思えてしまいがちですが、全音音階なので注意しましょう。

ドが主音の全音音階(下行形)
ドが主音の全音音階(下行形)の小節

ホールトーンスケール

同じくドを主音とする全音音階で、次は音が下がっていく下行形です。記譜もサラっと確認しておきましょう。全音音階は英語式でホールトーンスケールと言います。

日本の音階

  • イ短調(Aマイナースケール)
    イ短調(Aマイナースケール)の小節とピアノ図
  • イ短調のヨナ抜き
    イ短調のヨナ抜きの小節とピアノ図

短調のヨナ抜きは演歌

短調のヨナ抜きは、演歌で使用される事の多い音階です。①のイ短調を例に挙げると、そこから第4音目のレと、第7音目のソを抜いたものが②です。

  • イ短調(Aマイナースケール)
    イ短調(Aマイナースケール)の小節とピアノ図
  • ラが主音の陽旋法(Aマイナーペンタトニックスケール)
    ラが主音の陽旋法(Aマイナーペンタトニックスケール)の小節とピアノ図

陽旋法は短調の五音音階

短調のニロク抜きは陽旋法(ようせんぽう)という、日本古来の音階になりますが、これは短調の五音音階(マイナーペンタトニックスケール)と同じです。③のイ短調を例に挙げると、そこから第2音目のシと第6音目のファを抜けば、ラが主音の陽旋法(Aマイナーペンタトニックスケール)です。

  • ラが主音の陽旋法
    ラが主音の陽旋法の小節とピアノ図
  • ラが主音の陰旋法
    ラが主音の陰旋法の小節とピアノ図

陰旋法の第2音目

陽旋法の第2音目と第5音目を、それぞれ半音2つ分下げたものを陰旋法(いんせんぽう)と言います。⑤はラが主音の陽旋法で、⑥はラが主音の陰旋法です。陰旋法は第2音目が第1音目の主音と、半音で隣り合っているというのが特徴でしょう。

陽旋法と陰旋法は種類が多い

陽旋法と陰旋法は種類が多く、他にも幾つか見られるようです。

  • ドが主音の律旋法
    ドが主音の律旋法の小節とピアノ図
  • ドが主音の呂旋法
    ドが主音の呂旋法の小節とピアノ図

律旋法と呂旋法は雅楽

⑦はドを主音とする律旋法(りつせんぽう)です。それの第3音目を半音低くすると、ドを主音とする呂旋法(りょせんぽう)になり、これら両方は雅楽で主体とされる音階です。呂旋法の方ですが、長調の五音音階(メジャーペンタトニックスケール)と同じ構成です。

  • ハ長調(Cメジャースケール)
    ハ長調(Cメジャースケール)の小節とピアノ図
  • ドが主音の琉球旋法(1)
    ドが主音の琉球旋法(1)の小節とピアノ図
  • ドが主音の琉球旋法(2)
    ドが主音の琉球旋法(2)の小節とピアノ図

沖縄の琉球音階

長調のニロク抜きで、沖縄の琉球音階(りゅうきゅうおんかい)が作れます。⑨のハ長調を例に挙げると、第2音目のレと第6音目のソを抜いたのが、⑩のドを主音とする琉球音階です。

正確な琉球音階

沖縄の方から聞いた話ですが正確な琉球音階は長調から第2音目を抜かないというのが正しいようです。なので、⑪が本当の琉球音階になるようですが、楽典などでは⑩で説明されている事が多いです。

記事終了
このページのまとめ
  • 色んな音階があるのだけでも知っておくと良い。
  • 同じ音階でも種類が見られるものも多数ある。
  • 国々によっても独自な音階がある。